「たかが動作遅延」が引き起こすリスクとは!?
新型コロナウイルス感染拡大の影響により急速に浸透したテレワーク。それに伴う形で、セキュリティの観点などから“仮想デスクトップ(VDI)”の導入も加速している。
IDC Japanが2021年に発表した調査では、VDIを導入済みと回答した企業は調査対象の40.4%と2020年と比較して12.7%の上昇が見られたという(2020年は27.7%が導入済みと回答)。また、オンプレミスの利用者の約6割が、クラウドでVDIを提供する“DaaS”への移行を検討しており、VDIやDaaS移行への意欲はいまだに高まっているといえる。
しかし、一方でVDIやDaaS導入後の課題も顕在化してきている。IIJが2021年に実施したDaaS導入企業を対象としたアンケートでは、課題感のトップに「動作の遅さが目立つ」という回答が挙げられた。
一見すると「動作の遅さくらい我慢すればいいだろう……」と思われるかもしれない。
しかし、この動作遅延は、社員の業務効率低下を引き起こすだけでなく、積もると“ダウンタイムコスト”と同等の影響を企業の業績に与えることが考えられるのだ。
ダウンタイムコストとは一般的にはシステムが停止している間に失われた収益を定量化したものだ。2019年にFacebookが14時間停止した際のダウンタイムコストは推定9,000万ドル(日本円で約103億円)に上ると試算されており、Ponemon Institute が2016年に行った調査では、ダウンタイム1分当たりのコストは平均で 9,000ドル(日本円で約103万円)で中小企業の場合は137~427ドル(日本円で約1万6千円~5万円)と試算されている。
日々の動作遅延は単純にシステム停止と比較はできないが、1分作業ができないだけで、上記のようなコストが生じる可能性があるのだ。
事業部門の業務効率低下による損害だけでなく、システム部門は動作遅延の問い合わせ対応によって、セキュリティ対応などのほかの業務に支障をきたす可能性もある。
では、このVDI/DaaS導入による動作遅延は、どのように解消できるのだろうか。2つの事例から見ていこう。
ポイントは導入前にアリ!
こちらの事例は、事前の想定よりリソース消費が多かったために遅延が発生してしまったというものだ。
移行前にユーザー部門のリソースを把握していれば、動作遅延やその後の対応などは起こらなかったかもしれない。
では、次の事例を見ていこう。
こちらの事例では、事前にアセスメントを行ったことで、本当に必要なライセンス数を把握でき、導入後もモニタリングを実施して、常に使わないアプリを管理することで
ソフトウェアコストの削減が可能となった事例だ。
動作遅延によるダウンタイムコストだけでなく、ソフトウェアコストの削減までを可能にした好例と言えるだろう。
2つの事例から学ぶべきポイントは2つ。1つ目は「VDI/DaaSを導入する前にリソースや利用状況を把握することで導入後のトラブルを防ぐことができる」という点。2つ目は「アセスメントによる利用状況の把握で必要のないアプリライセンスなどのムダなコストをカットできる」という点だ。2つ目のポイントに関しては、導入前、導入後のどちらも
同じことが言えるだろう。
VDIを導入済みの企業も考えるべき、動作遅延の根本原因
2つの事例から導入前にアセスメントを行い、利用状況を確認することの重要性を述べたが、すでにVDI/DaaSを導入済みで思うようにパフォーマンスが出ていないという企業もアセスメントを行うことによって得られるメリットはある。
現在起こっているトラブルの根本原因を、利用状況のアセスメントによって知ることで、その原因にピンポイントでコストと人員を投下し、トラブルの解消に動くことができるのだ。
CPUやディスク容量が原因とされていたパフォーマンス低下が、ユーザーの利用方法に原因があり、利用指導を行うだけで解決……なんていうこともあるのだ。
ほかにも従量課金制のクラウドサービスの利用状況の確認など、必要のないコストを防ぎ、必要な部分に投資を行うという観点からも導入後アセスメントのメリットを得ることができる。
VDI、DaaSの導入前、導入後の利用状況アセスメントによって、動作遅延やトラブルを未然に防ぎ、ムダなコスト、ムダな人的リソースをカットし、より付加価値の高い取り組みに注力できるようにすることが、テレワークでも業務効率を低下させないポイントの1つとなるだろう。
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